【テルモ株式会社共催】
*がんと栄養

食べられない そんな悩みはありませんか?

8月7日(日)15:0015:45 第1会場

本講演では、最近注目されている「がんと栄養」について、お話します。がんの治療を行っていると、「食事が摂れない、食べているつもりだけれども瘦せるんです。」という悩みをお持の方は少なくありません。治療を継続するために必要な栄養と、食事が摂れない時の工夫について、お話します。


*こちらのコンテンツは、アーカイブでの視聴の公開はございませんが、事前および当日寄せられた質問について、利光先生のご厚意で文章で回答をいただきました。このページの下部をご覧ください。

講演者

利光 久美子 ( としみつ くみこ )
愛媛大学医学部附属病院 栄養部 部長

愛媛大学大学院 生物資源利用学専攻博士課程(学術博士)修了 1989年国立病院四国がんセンターでがんの栄養療法と肝臓の発がん予防に関わる臨床研究に携わり、2000年より愛媛大学医学部 栄養管理室(副室長)、2011年より現職。日本病態栄養専門管理栄養士、がん病態栄養専門管理栄養士・研修指導師の認定資格を有し、現在は、がんの専門的知識を有する管理栄養士の人材育成に携わっています。

司会者

小西 敏郎 ( こにし としろう )
東京医療保健大学 副学長・医療栄養学科長 / NPO法人キャンサーネットジャパン理事

1972年東京大学医学部卒業。66歳まで胃癌や食道癌・大腸癌などの消化器癌の手術治療を主にする外科医でした。趣味は内緒(ナイスショットと呼びます)。自身が59歳で胃がんの内視鏡治療を、63歳で前立腺がんの手術を受けた。いずれも非常に早期で発見でき完治したのも毎年定期的に検診を受けていたおかげ。いまも毎年検診をうけている。

Q&A

Q1:書籍やネットの情報によると、〇〇〇を食べると良くないとか〇〇〇を食べた方が良いとか〇〇〇のサプリメントが効くなどという情報を沢山目にします。基本的には規則正しい食事と栄養バランスを考えての食事ではいけないのでしょうか?また、乳がん患者ですが体重増加は悪いのでしょうか?
A1:バランスの良い食事は基本です。栄養素的に不足しやすいものは、お薦めの食品として示されていることもあります。乳がんなど、体重増加を伴いやすい場合は、目標体重を主治医とともに定め、体重維持を心がけてはいかがでしょうか。

Q2:がんにかかってから食事が気になるようになりました。がんにかかるまでも食事はなるべく手作りし、野菜も採っていたのでなぜ病気になったか不思議です。エビデンスのある食事療法はあるのでしょうか。
A2:食事に注意をされて来られたのですね。がんを治癒させる食事療法は残念ながらありません。しかし、エネルギーやたんぱく源それらに伴う栄養素は体重減少や骨格筋の低下を防ぐためにも必要です。

Q3:どこまで食事を気にすればいいのか悩みます。好きなものを食べて飲みたいけど、癌が気になる。その中でもどうしてもこれは避けた方が良いもの、はありますか?癌とわかったらアルコールはやめたほうがいいのでしょうか?
A3:基本的に食べてはいけないというものはないのですが、栄養素の不足により、体重減少や筋肉量の低下、倦怠感等をきたしやすくなります。そのため、食べたい物を食べると同時に、身体の維持に必要な栄養素で不足が想定されている栄養摂取素とその摂取方法について、管理栄養士に相談されては如何でしょうか。また、がんによっては、アルコールは控えることをお奨めするケースもあります。

Q4:食べた方が良いもの、逆に食べてはいけないもの、調べると色々な情報があり何がダメなのか、どの栄養摂取が良いのか知りたいです。
A4:食べた方がよいものは、自分にあったエネルギー量であり、たんぱく質、ビタミン、ミネラル類の摂取です。治療薬によっては、栄養素や食品が効果に影響するものもありますので、個別に主治医にご相談されることをお奨めします。

Q5:もう、がんにはなりたくありません。基本的にこれだけは外せない栄養素だっていうのがあれば教えて下さい。
A5:がん予防のある食品はビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを含む野菜、果物、植物性油脂のほかに機能性成分(ポリフェノール、カロテノイドなど)を含む食品を取り入れることです。ポリフェノールやカロテノイドには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する働きがあります。
緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンの摂取量が多い人は肺がんの発症リスクが低いと言われていますし、ビタミンD、カルシウム、葉酸(ようさん:ビタミンB群の一種)等の摂取が大腸がんのリスクを下げるという報告があります。

Q6:どの段階でも栄養を取った方がよいのでしょうか?がんに栄養を補給してしまうことにならないでしょうか?
A6:がんはステージに関わらず、体重や骨格筋が減少しやすい状況に陥る場合もあります。治療を始める前から、栄養の摂取をお奨めます。

Q7:20年前に希少がんに離間、手術・化学療法を経て現在寛解。化学療法後、体重が元に戻らず消化器系や他検査をするが特に異常はみられない状況です。163cm35kgなので、辛いです。何年経過しても戻らない考えられる原因や対処法がありましたら、ご教授の程お願い申し上げます。
A7:詳細が分かりませんので、消化器や他の検査に特に異常がない。という状況からの助言です。食事にMCTオイルを毎食(3食/日)大匙1杯かけて食べることで、約200kcal/日強のエネルギー量を摂取することができます。MCTオイルは、エネルギーとして利用しやすいことからお奨めです。但し、空腹時には下痢を誘発しやすくご注意ください。

Q8:好きなものを食べて良いと言われるがあらゆる治療の前後にやめた方がよいこと、やった方が良いことを知りたいです。
A8:手術前の治療では、免疫賦活栄養剤が奨められています。また、投薬によっては、栄養や食品との相互作用を有するものもありますので、薬剤師の服薬指導で確認をしてください。

Q9:がん患者さんが行うとよい栄養療法について、どのようにして情報を得ていますか。また探しにくいと思われているでしょうか。実際に治療医師に尋ねたときに、管理栄養士や栄養サポートチームなどにつなげていただける患者さん・家族はどのくらいいるのでしょうか。
A9:入院設備を持っている施設には、必ず管理栄養士が在席していますし、栄養サポートチームは設置されていると思います。また、外来化学療法を行っている病院では、がんの専門的管理栄養士が在席している病院は多くなっています。主治医にご相談いただければ、多くに繋げていただけます。

Q10:抗がん剤副作用で下痢になる際の対処法を教えてください。
A10:基本的には、止瀉剤を使いますが、食事面からですと、可能限り腸内の細菌叢の状態や腸のクリプト(ヒダ)を保つために、乳酸菌と食物繊維の摂取がお奨めです。

Q11:免疫療法など薬物治療において患者の栄養状態が重要と聞きます。超高齢化が進む日本において患者栄養状態維持対策などについて教えてください。
A11:高齢者は栄養摂取量の低下や、摂取後、自身の骨格筋等に作り替える能力の低下などにより栄養状態の維持が難しくなります。高齢期を迎える前から、基礎疾患の食事療法とともに、摂取量の低下を招かないようにする必要があります。

Q12:栄養に留意すれば苦痛無く延命できるでしょうか。
A12:疾患治療は必要ですが、身体機能を維持するためには、栄養と運動(活動)が基本です。

Q13:抗癌剤治療中にファスティングをする方が、治療が楽になるのか。治療中は糖質を避ける食事をするべきか教えていただけましたら、幸いです。
A13:抗がん剤の治療中は副作用もあり、食事が摂りにく状況になることは少なくありません。例えば、糖質を治療中に下げるとしても、その代わりの栄養素を摂取する必要があります。また、食べることは、栄養素を摂取すると同時に、腸管を使用することで、免疫力低下を防ぐことにも繋がります。

Q14:胃全摘後、プレアルブミン値を上げるために効率的な栄養剤があれば教えてください。
A14:アルブミン値を上げるためには、自身の身体に必要なエネルギーの確保とタンパク質の摂取が必要です。胃を切除することで、沢山の量を食べにくいとも思います。そこで少量で高栄養な栄養剤を使用することをお薦めします。例えばアップリードはゼリー状で、保存可能な蓋がついていますので、数回に分けて召し上がれます。

Q15:家庭で取り組みやすい食事療法の具体例、もしくは情報提供サイト等ありませんか?
A15:共催企業のテルモでもレシピを掲載しています。

Q16:ケトン食療法について詳しく知りたいです
A16:ケトン食(低炭水化物・高脂肪の食事)を用いた食事療法は、癌患者にとって有力な支持療法になりうると期待される報告も出ていますが、炭水化物の制限等、具体的な食事の摂り方については未解決の部分があります。また、ケトン食の副作用として、低血糖、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、活動性低下などが生じることもあり、注意が必要です。

Q17:食欲増進剤アナモレリンが上市されてますが、この服用だけでは体重増加は無理な様ですがオメガ3系栄養補助食品の必要性をどの様にお考えですか?
A17:食欲の増進には、医師から処方される薬(漢方含む)がありません。是非、主治医の先生にご相談してみてください。またω3系脂肪酸ですが、その中にに分類されるα-リノレン酸は、人間の体内では合成できない必須脂肪酸です。摂取後は脳神経の機能にも関わるDHAやEPAに変換されるのが特徴です。特にEPAは、癌による慢性炎症を制御し、癌悪液質等を抑制し癌支持治療に応用できる可能性があることが報告されています。

Q18:激やせしてしまって食欲もない場合、どうやって栄養を取ったらいいのか。また、体重を戻す(増やす)ためにした方がよいことを教えてほしいです。
A18:食欲がないときも、少量で栄養が摂取できるアップリードなどの栄養剤を使用してはどうでしょう。一度に摂取する必要はなく、自分の体調に合わせて、食べやすい時に摂取しては如何でしょうか。

Q19:痩せ型体型のほうが肥満型体型より、悪液質に関しては、予後が悪そうに感じるのですが、体型体質に違いがあるのか。
A19:やせ型の方が、もともと栄養の摂取や吸収力の低下などの体質はあるかと思われます。そのため、やせ型体型の方の方が体重維持は難しいでしょうか。

Q20:小腸ストーマが増設され、化学療法をしている中で、食べても体重が減りやすくなりました。ストーマがある人は太りにくいとは聞きますが、栄養をしっかりとるために意識すべきこと、必要なサプリメントがありましたら教えて頂きたいです。
A20:小腸は、栄養を吸収する消化管ですので、少し吸収が弱くなっているかもしれませんね。栄養剤を補助的に摂取すことで、体重増加に直結しなくても、たんぱく源やビタミン、ミネラルの補給に繋げることで、疲れが取れやすくなったりすることができると思います。